一宮市の玄関口である尾張一宮駅前ビル(i-ビル)のエレベーターを華やかにする「アートエレベーターデザイン」について、「笑顔」「HAPPY」をテーマに6月~8月に一般募集し、99作品の応募があった中から、3作品を選定しました。
入賞作品は、華やかな羊を描いた一宮らしさが表現されたもの、青い鳥の羽ばたく様子が描かれたもの、新しい手法を取り入れ未来への喜びを感じられる3作品です。
10月1日にはエレベーターにラッピングされますので、是非ご覧ください。
展示期間:2024年10月1日(火)~2025年9月30日(火)
入選作品
デザインA(iービル南棟 1Fエレベーター出入口正面の外扉)
「HANA-HITSUJI」 作者:野村 恒司(東京都)
一宮市の産業と馴染み深く、秋に開催される[BISHU FES.]のシンボルキャラクターのモチーフでもある羊。訪れる人が見るだけで心踊りHAPPYになるよう、咲き乱れる花々を身にまとい優しく出迎える、そんなおめかしした羊でデザインしました。
デザインB( iービル南棟 エレベーター室内扉)
(1)「僕らが羽ばたくトキ」 作者:山田 源(Atelier Edokoro所属)(愛知県一宮市)
絵を描くことが大好きな山田君。彼は今日も楽しみな気持ちをこっそりカバンに忍ばせて、アトリエにやってきます。立ち上がり大きく手を2回叩いた時、それは上手くいった合図。彼の描いた青い鳥が、みんなの「幸せの青い鳥」になりますように。
美しく咲き乱れる藤の花。施設に訪れる方々に、自然の美しい現象を体感していただきたい。街中に出現した、オアシスのように癒しと幸せを感じさせるアートの提案です。はかなさや不完全さを受け入れることを中心とした美学のもと、雪、霜、雹などを使って描く独自技法ICEDYE「氷染色」により描いた作品です。
i-ビル アートエレベーターデザイン プロジェクト審査講評
本プロジェクトは、2022年に開催された国際芸術祭「あいち2022」のレガシーとしての意味合いを持ち、展示用に整えられた場所ではなく、国際芸術祭のようにパブリックなスペースを活用することが特徴として挙げられる。市内最大のターミナル駅に隣接するi-ビルは、中央図書館や子育て・ビジネス・市民活動の支援センター、ホールや中小会議室などを目的に訪れる人達や、シビックテラスのように様々な催事や憩いの場として、無目的にふらっと立ち寄る人達も多く、現在の一宮市の姿を投影するような風景を見ることができる。人々の往来や多様な活動を内包しながら、一宮市の玄関口にふさわしい公共の在り方を体現しているような施設だ。
今回の募集には、全国からデザインAが50作品、デザインBが49作品の応募があり、多くの力作が揃う中で、主旨やテーマへの応答とその場にふさわしい作品の選定を心掛けた。デザインAの野村恒司による「HANA-HITSUJI」は、一宮市の地場産業である毛織物から着想を得た羊をモチーフにした華やかな作品である。顔が黒いことから“サフォーク種”と考えられるが、一般的に食肉用として飼育されている品種であり、羊毛には適していないと考えられてきた。しかし近年では、尾州をはじめとしたいくつかの地域で毛織物製品への開発と活用が進み、アップサイクル素材としての価値も見直されるようになっている。作品は、近代以降の毛織物産業を讃えるかのように羊毛部分が青と赤の鮮やかな花として描かれ、毛織物産業の未来をポジティブに捉えながら、シビックプライドの熟成にも寄与できるような作品だ。デザインBの浅井沙弥香による「Glycine」は、アートとしての強度を持つ作品である。「アート(art)」の語源はラテン語の「アルス(ars)」であり、技術や技法を意味している。浅井の作品は、“氷染色”と呼ばれる独自の技法で描かれ、藤の花の原形を想起させながらも、氷の溶け出す偶発的な流れや染みによって不思議な世界観を作り出している。エレベーターの小さな空間では、より細部に目を凝らす事になるだろう。作品との距離によって見え方が変わる。そういった変化にも注目しながら見て欲しい作品である。デザインBのもう一つの作品、山田源による「僕らが羽ばたくトキ」は、応募案の中でも最も無邪気さを感じさせ、童心を呼び起こすような作品だった。背景の白い空を何かに向かって無心に飛ぶ青い鳥たちは、余韻を残しながら前後のナラティブも感じさせてくれる。描く事を純粋に楽しんでいるような作品だからこそ、応募作品の中でも特に目を惹きつけるような魅力を持った作品だった。
国際芸術祭「あいち2022」のレガシーは、一宮市に何を残すことになるのだろうか?「あいち2022」では、まちの社会資源や歴史に目を向け、新たな視点で創造的に活用しながら、まちの魅力を引き出すことを心掛けた。しかし、一過性のイベントだけで何かを生み出すことは難しい。本プロジェクトのように、出自や性別に関係なく多様な人々が集い活躍できる機会を、継続的・長期的な視点で取り組むことは、まちをCultivate(耕す)し、Culture(文化)として根付かせていく。その積み重なっていくCultureは、私たちの住むまちをより豊かな土壌へと押し広げてくれるに違いない。
審査員代表:栗本真壱
(審査員略歴)
一級建築士。栗本設計所代表。愛知県一宮市生まれ、一宮市在住。
名城大学建築学科卒業後、シーラカンス・アンド・アソシエイツ一級建築士事務所、大建metを経て、2006年栗本設計所設立。名城大学・大同大学・東海工業専門学校非常勤講師。セ・カ・イ(繊維・会館・一宮)建築チーム代表。オルタナティブスペース「書庫と○○」主宰。国際芸術祭「あいち2025」アーキテクト。
アーツチャレンジ2009入選、あいちトリエンナーレ2010長者町企画コンペ入選。あいちトリエンナーレ2016・2019・国際芸術祭「あいち2022」アーキテクト。
協賛:いちい信用金庫、モリリン株式会社
主催:指定管理者トヨタエンタプライズ・アイシーシー共同事業体
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